愛人はオートバイ

オートバイを愛人に見立てて妄想しまくる変態ブログ!もと『48歳リターンライダーがハーレーのオーナーを目指す!』からタイトル変更しました。

負けるもんか。

久しぶりに長男ニイニイ君(仮名 中1)のことを書こうと思う。

 

長男は、3歳のころからサッカーを始め、小学校では地元のスポーツ少年団に入っていた。中学に上がるときに、学校のサッカー部ではなく、指導力のあるクラブチームに入団することになった。

小学校の時のコーチからは、「息子さんの実力では、クラブチームではベンチ要員ですよ。」と冷たく突き放されたのを今でも覚えている。

言葉にこそ出さなかったが、ベンチでもいいじゃないか、サッカーに精通した、クラブチームの指導を受けられるなら、それだけでも十分に価値はあるだろう!と俺は思った。

 

クラブチームに入団してから巡り合ったコーチは指導力もあり、息子はここ半年ぐらいの間で、ますますサッカーが好きになり、ほとんど休まず練習に参加し、土日も早朝から試合に出かけていってしまう。

ただ、残念ながら、クラブチームには各小学校の強豪チームからやってきた選手が多いこともあり、うまい選手はAチーム、それ以外はBチームという扱いになる。厳密に分かれているわけではなさそうだが、息子はBチームだ。いつもリーグ戦での出場機会はなく、あっても後半残り15分の出場、あとは、リーグ戦終了後の練習試合でやっとフルで出られるぐらいだ。

それでも、帰ってくると、「やっぱりサッカーおもしれえ!」と満足げに帰ってくる。

長男は体が小さい。身長は148センチ、利き足が左で、ボールタッチが上手いぐらいで、それほど特徴のある選手ではない。

本人もそれを自覚している。でも、諦めることなく、「俺もAチームで必要な選手になるんだ!」と、背を伸ばすために毎日プロテインを飲み、当たり負けしないように体幹を鍛え、ストレッチをし、練習がオフの日も、近所の公園で2時間は絶対に自主練習をする。

親のひいき目もあるかもしれないが、自分には似ても似つかない努力型だ。

 

 

クラブチームに加入してから、ほぼ親の出番はなく、チームのホームゲーム以外はかなり遠くで試合をやるので、ほとんど見に行っていない。本人も恥ずかしいから来ないでくれと言う。出番が少ない自分を見せたくないのかもしれない。

 

そんななか、通常のリーグ戦とは別に、フレッシュカップという別のカップ戦が開幕した。

コーチからの連絡では、日頃、出場機会が少ないBチームの選手を主に起用するとのことだった。

 息子にも先発出場の可能性が出てきた。本人もかなりの気合の入れようだ。

 

そして日曜日、フレッシュカップ開幕戦、彼は勇んで出かけて行った。

会場は、自宅から車で一時間ほどのところだった。

基本的にアウェイゲームは見に行かないことにしていたが、せっかくの息子の先発の試合かもしれないので、妻と一緒に、こっそり見に行くことにした。

 

会場につくと、だだっ広い河川敷公園で、サッカーコート以外にも野球場やテニスコートもあり、探すのに一苦労したけど、この広さがあれば、息子にばれずに観戦することができるので、安心した。

 

試合開始のホイッスルが鳴った。

遠くから探しても、フィールドに彼の姿はなかった。

この大会でも、ベンチからのスタートだったのだ。

コーチの横で、三人の交代枠の選手が座っている。

 

前半、チームは一失点で折り返した。後半のホイッスルが鳴っても、彼はまだベンチだった。見ていると、途中で立ち上がり、ドリブルの練習や、リフティングをしている。

チームは一点返し、同点にしたものの、すぐに失点、1対2で残り15分となった。

やっと息子が呼ばれる。交代ゾーンにいる我が息子はとても小さく見える。

交代が許可されると、全力疾走で左サイドハーフの攻撃的なポジションに入る。

15分という短い時間の中で、なんとか自分の存在感を示そうと頑張っている様子が見える。しかし、見せ場は少なく、一度だけコーナーまで相手を追い詰め、ボールを奪取し、ゴール近くまでドリブルで持ち上げて、パスを出したが、味方がゴールできず、アシストにはならなかった。

 その後の短いプレー時間では、ボールが回ってくる回数も少なく、思うようなプレーができず、終了のホイッスルが鳴った。

 試合は終了間際にセットプレーから同点に追いつき、引き分けに終わった。

 

 俺と妻はこっそり試合場をあとにした。

 先発フル出場の意気込みだったのが、まさかのBチームでも交代要員だった姿を、両親が見ていたとしたら、本人のプライドも傷つくだろう。

 妻とは、今日の試合を見に行ったのは内緒にすることにした。

 

 夕方、彼は帰ってきた。

 「先発で出れなかったあ~」と、明るい声で帰ってきた。悔しさを笑顔でごまかしているのがすぐにわかった。

 

 シャワーを浴びたあとに、リビングでユーチューブでロナウジーニョのスーパープレー集を見ながらつぶやく。

「お父さん、努力って本当に報われるのかな?」

 

答えに窮する。

息子には申し訳ないが、自分は努力で何かを勝ち取ったことがない男だ。

挫折と後悔と諦めで人生を過ごしてきた父親が、「努力は必ず報われる」などと口に出していうことなんてできない。

 

「すまん、お父さんは、報われるまで努力をしたことがない。本当の努力の先に、なにがあるのか、俺には教えてあげることができない。いまは頑張ってるお前を応援することしかできないけど、お父さんが、大人になってから出会った言葉をおしえてあげよう。きっとニイニイの支えになる言葉だ。」

 

 自分が言葉で伝えるより、いいだろうと思って、このCMを見せた。

 

がんばっていれば、いつか報われる。
持ち続ければ、夢はかなう。
そんなのは幻想だ。
たいてい、努力は報われない。
たいてい、正義は勝てやしない。
たいてい、夢はかなわない。
そんなこと、現実の世の中ではよくあることだ。
けれど、それがどうした?
スタートはそこからだ。
技術開発は失敗が99%。
新しいことをやれば、必ずしくじる。
腹が立つ。
だから、寝る時間、食う時間を惜しんで、何度でもやる。
さあ、きのうまでの自分を超えろ。
きのうまでのHondaを超えろ。
負けるもんか。

本田技研工業㈱のホームページより)


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