愛人はオートバイ

オートバイを愛人に見立てて妄想しまくる変態ブログ!もと『48歳リターンライダーがハーレーのオーナーを目指す!』からタイトル変更しました。

ぼろぼろエースナンバー

1年ほど前、俺は長男ニイニイ君(仮名 中二)のことで、一本記事を書いた。

ニイニイ君はクラブチームでサッカーをやっている。

katen11.hatenablog.com

 

あれから、ニイニイ君は少し背は伸びたものの、中学生にしてはまだ小さいまま。

周りがどんどん大きくなり、体格差が開く中で、クラブチーム内ではさらに出場機会は減っていった。

 

 本人は筋トレやストレッチ、ボールタッチの練習は欠かさずやっているけれど、努力ではなく結果が求められるのがスポーツの世界だ。

 それはプロだけじゃなく、中学生のクラブチームも同じなのだ。

 

 半年ほど前に、公式戦から帰ってきたときに、不機嫌な顔でニイニイはこういった。

 「背が高くて、スピードのあるやつしか出れない。どんなにがんばっても、俺は試合に出してもらえない。二軍の練習試合で出れても、コーチは全然二軍のことなんか見てないんだよ。もう、行きたくない。」

 

 そういって、泣き出したことがあった。

 

 クラブチームに入れたのは間違いだったかな、、、

 好きでも結果が出ない、楽しむことができない状況に放り込んでしまったのは、親のエゴだったのかな、、、と俺と妻は悩んだ。

 

 学校のテストの期間もあり、ニイニイ君は一か月ほどクラブの練習を休んだ。

 それでも、息抜きのため近所の公園に毎日一時間はボールを蹴りに行っていた。

 

 テストも終わり、久しぶりにクラブチームの練習に復帰するとき、あのとき泣いたことはなかったように、「やっぱサッカーやりに行くの楽しみだわ!」と意気揚々と出かけて行った。

 

 そのころから、帰ってくるたびに、練習であったことの話す内容に変化が出始めた。

 

 それまでは、ドリブルで何人抜いた、こんな技が出せた、など、技術的な話しが多かった。

 しかし、最近は、連携が取れた、スペースを埋めることができた、タイミングを合わせて裏に抜けることができた。

と、全体を意識することを言い始めたのだ。

そして、なんだか話していることが、少し高度になっていっているような気がした。

いったい何がきっかけだったのかはわからないが、練習を休んだ一か月の間で、彼の中で何か発見があったのかもしれない。

それからというもの、ニイニイは試合に出られなくても不平や不満も言わなくなっていった。

 

それから数カ月たった先週のことだ。

「コーチから、お前調子よくなってるな!って言われたよ」

と、ニコニコしながら練習からかえってきた。

 

そして日曜日。

ホームグラウンドの近所の河川敷でU-14(14歳以下)の公式戦があった。

ここのところ勝てていないチームとしては、落とせない一戦だ。

 

妻と一緒にこっそり見に行くと、ニイニイ君はいつものようにビブスを着て、ベンチに座っていた。

前半、チームは先制したものの、追いつかれ、逆転を許し1対2で後半に入った。

後半5分を経過して、チームのエースフォワードとトップ下のミッドフィルダーが交代を告げられる。

ビブスを着ている10人もいる控え選手の中から、ひときわ小さいニイニイ君が呼ばれてピッチに入る。

普段は左サイドハーフというポジションだが、トップ下に入った。

攻撃をコントロールする難しいポジションだ。

 

小さい体で10センチ以上も背が違う相手のディフェンダーに体を当てて、タメをつくる。パスを出す、走る、

うまくいくことの方が少ないけれど、なんとか機能はしているようだ。

10分ほどして、下がったポジションからミッドフィルダーミドルシュートを決めて同点になった。

相手チームは、勝ちを取るために前線に大きく上がってる。

こちらも残り時間で追加点を決めて、なんとか勝利を収めたい。

お互い相譲らず、激しい攻防が続く。

残り時間は数分になった。終了時間を意識して、前がかりに攻めあがった相手のディフェンダーが出したミッドフィルダーへのパスを、小さな体の選手がひょいと現れインターセプトした。

相手のディフェンダーがその小さな背中を突き飛ばす。しかし体勢を崩しながら、スペースにそのボールを供給する。そして二人はそのまま倒れて砂煙が舞う。

審判はファールを取らずプレーオンのジェスチャーをしている。

スペースへ反応した味方の選手がオフサイドギリギリでボールを受け、そのままキーパーと一対一になり、力強く蹴りこむ。逆転に成功した。

ゴールを決めた選手は砂煙のなかからやっと立ち上がった小さな選手を指さしながら走ってくる。

小さな選手は大きな選手と抱き合って喜ぶ。

小さな選手の背中には11番。

五十音順で、たまたまもらったエースナンバーでありながら、ずっと控えになっていたニイニイ君は逆転ゴールをアシストして大事なところで結果をだすことができた。

 

 

息子の試合用のユニホームの番号は新品のようにきれいだ。なかなか試合には出られないから。

しかし、練習用のユニホームの番号はボロボロだ。

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一年後、この番号は擦り切れて無くなってしまうかもしれない。

いつまでサッカーを続けるかはわからないけど、この番号が擦り切れることで、息子はなにか得るものがあるだろうと思う。